東京・吉祥寺の井の頭公園に面した老舗フランス料理店「芙葉亭(ふようてい)」(東京都武蔵野市)が、5月で33年の歴史に幕を閉じる。
一戸建てを改装したおしゃれな内装が評判で、プロポーズや結婚式に利用する人も多かったが、新型コロナウイルスの影響で急きょ閉店を決めたという。オーナー中山葉子さん(62)は「こんな形での幕切れでお客さまに申し訳ない」と話している。
開業は1988年。渋谷でコーヒー店を営んでいた中山さんの母が、自宅1階を改装してフランス料理店を開いた。らせん階段にグランドピアノ。シャガールの絵が飾られ、木漏れ日が差し込む。当時はバブル真っ盛り。メディアに予約の取れない店として取り上げられ、最盛期には10人のスタッフを抱えた。
卒業祝い、就職祝い、七五三。様々な家族のイベントに利用された。プロポーズの場に使うカップルも多く、スタッフが柱の陰からハラハラしながら見守ったことも。なじみの客が亡くなり、家族が写真を手に訪れてくれたこともあった。
音楽の講師だった中山さんは12年前、母親から店を任された。結婚式を店で挙げてくれた人にボージョレ・ヌーボーを毎年送るなど、母の方針を継承。花見シーズンや異動時期の3月、4月は予約帳が真っ黒になるなど経営は順調だったという。
だが、新型コロナウイルスの影響で、今春は歓送迎会のキャンセルが相次いだ。予約の取り消しの電話が続き、「恐怖を感じた」と中山さん。7人のスタッフを抱え、人件費や食材費、電気代などで毎月800万円かかる。東日本大震災の時は徐々に客足は戻ってきたが、今回は先が見えなかった。
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東京 歌舞伎座の前にある創業150年余りの老舗弁当店が、新型コロナウイルスの影響で20日、店を閉じることになり多くのファンが慣れ親しんだ味との別れを惜しんでいます。
その一方で、店では設備の老朽化や後継者の不在などから、この春の事業譲渡を目指していましたが、歌舞伎座の公演が相次いで延期となったことから譲渡の見通しがたたなくなり、廃業を決めたということです。
最後の営業日となった20日は店が混雑しないよう、開店前から整理券を配りました。
そして、開店するとファンが順番に訪れて名物の懐石弁当などを買い求めていました。
70代の女性は「歌舞伎座に通うようになって30年ここに来ています。寂しいですが『長い間ありがとうございました』と言いたいです」と話していました。
また30代の男性は「150年の伝統が、新型コロナウイルスが影響して途絶えてしまうのは悲しいです」と話していました。
店によりますと、およそ400個用意した弁当は昼前に完売しましたが、20日午後5時までは営業するということです。